現代サッカーの最前線、ポジショナルプレーとストーミングとは

当ブログでは久しぶりなサッカーの話題。

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しばらくサッカー系の解説記事が少なくなっていたのは面倒くさくなっていたからではなく、単に使うための画像が入手できなくなったからです。今後もあのスタイルで解説記事を書くことは少なくなると思います。

言い訳はこの辺りにして。今回取り扱うのは「ポジショナルプレー」と「ストーミング」という現代サッカーにおいてよく交わされている2つのキーワードです。少しでもサッカーのことを調べたりしている方は一度は目にした、耳にしたことがある言葉だと思いますが、ぶっちゃけ「よくわかんない」というのが正直な感想だ、という方も多いと思います。今回はそういう方向けにこれらのワードの「捉え方」をお伝えしようかな、と考えています。

先に断っておきますが、この記事の中で「ポジショナルプレーとはこうである」「ストーミングとはこうである」と言いたいわけではありません。皆様に少しでも「こんな感じだ」とふわっとでもいいので理解していただければいいな、と思っています。

「ポジショナルプレー」とはなんなのか

そもそも、この手のサッカー用語は解釈によって意味が変わることが多々あります。というのも、どっかの機関が「こういう言葉を作りましょう」といって辞書に言葉を追加しているわけではなく、記者だったり研究者だったり指導者だったりが各々の解釈を勝手に言語化しているケースが多いので、その解釈によって複数の意味が生まれてしまうからです。なので、今回の私の説明もあくまで「私の解釈」であると思っておいてください。

ポジショナルプレーという言葉をそのまま日本語化するのは難しいですが、私は「規範」という言葉が一番マッチするのではないかと思います。

ポジショナルプレーもストーミングも、「サッカーという競技において、少しでも勝利する確率を高めるためにはどうすればいいか」を先人たちが探求していった結果として出来上がった概念であることには疑いの余地はありません。そして、勝利するために必要なポイントは以下の4点と考えられます。

①自分たちの長所を最大化する

②自分たちの短所を最小化する

③相手の長所を最小化する

④相手の短所を最大化する

この4点のうちいずれか、またはすべてをを達成することができればゲームで勝利する確率は格段に上がるでしょう。言い換えてみれば、「いかに得点し、失点しないか」です。

ではそれを達成するためにはどうすればいいか。ここで生まれる概念が「優位」です。「質的優位」「数的優位」「位置的優位」なんかがよく挙げられますが、私は「精神的優位」「心理的優位」なんかも含めるべきだと考えています。個人的な意見ですがね。

話を戻して。「相手より優位な状況を創りだし、そこからアクションするための道具」が「優位」です。どの道具(数なのか、質なのか、位置なのか)が良いかは、当然そのチーム・リーグ・コンディションによって変わってきます。なので、優位性は万能ではありません。年に1回しか試合がないのなら話は違いますが、年間何十試合もこなさなければならない現代サッカーの中では優位性を長期にわたって保つことは難しいのが現状です。

そこで、「勝ちパターンというものを作り、それを毎試合プレーすれば一定の成果が得られるのではないか」という考えが出てくるわけです。これが「ポジショナルプレー」という概念です。

先ほど「規範」と書き替えましたが、要するに得点や失点を抑えた際の「型」を抽出し、それに伴った規則=ルールを作り、選手に覚え込ませ、「ゲームの中での再現性」を高めることによって効果的に優位性を保とう、というのが「ポジショナルプレー」です。元来「カオスなスポーツ」であるサッカーを「非カオス化」しようというアプローチ、と言い換えられるかもしれません。例えば、「このゾーンでこの選手にボールを持たせる」「このエリアにこの人数を配置する」「この位置にこの選手を配置する」というのも、それが「ゴールから逆算された型」の一部であるならポジショナルプレーといえるのではないか、というのが私の解釈です。

ポジショナルプレーを行うにおいて重要なのは、「能動的に優位性を用いてゲームを支配すること」にあります。では、サッカーというスポーツにおいてゲームを支配するために必要なのはなんでしょう?

そう、ボールです。相手のバランスを崩し、自らのバランスを整えるには、能動的であることが大前提。そのためにはボールが自分たちのものではないといけません。ですから、ポジショナルプレーを行うチームは「ボールポゼッション」と「奪われた後の素早いプレスからのポール奪取」がセットで行われているわけです。当然、そのチームには「ボールを持っているときに輝くタレント」が必要になるわけで、マンチェスター・シティやバルセロナなどがその道の先行者となるのはある種当然といえるでしょう。

でも、世の中にはそうではないチームもあります。基本的に「ボールを持っているときに輝くタレント」はいつの時代でも高額であり、希少な人材です。そのようなタレントを保有できないチームがどうすればいいのか、たどり着いたのがストーミングです。

ポジショナルプレーに対抗してストーミングがある・・・というわけではない?

ストーミングの代名詞といえばユルゲン・クロップ率いるリバプールなのは言うまでもありません。クロップといえばお馴染み「ゲーゲンプレッシング」「思考回路を取っ払ったトランジション」が頭をよぎりますが、そんな彼が・・・というか、彼らが至った境地がストーミングです。他にもポチェッティーノ率いるスパーズやランゲラックのRBライプツィヒ、ディ・フランチェスコのローマ、一昔前のロジャーシュミットのレバークーゼンなんかもこの系列です。特に、先行者という意味ではロジャーシュミットがいち早くピッチで体現していたように思います。

ポジショナルプレーにおいて、マンチェスターシティやバルセロナが「ボールの所有権がどちらにあるか」というところから型を創っているのに対し、リバプールやスパーズは「ボールがどこにあるのか」というところから型を創っています。つまり、型の作り方が違うだけで、ストーミングはポジショナルプレーの一種といえるのではないか?というのが私の持論です。

ストーミングを志すチームに共通していることは、

①常にプレッシングを止めない

②すべての選手の向きがゴールに向かっている

③自チームの陣形やバランスが崩れることを厭わない

以上の3項目です。①と②はセットのようなもので、このストーミングという概念においては必須項目です。ストーミングにおいては「誰がボールを持っているか」は関係ないので、たとえGKやCBがボールを持っていたとしても「敵陣深くにボールがある」ことに変わらないので当然プレスをかけ続けます。一人がかわされたら二人目、かわされたら三人目と一人目がプレスバック・・・と、お馴染みの囲い込みプレスが繰り広げられます。そんなことをしていたら当然陣形やバランスなんて保ちようがありませんから、③は当たり前の結果のように思います。

「でも、ただプレスをかけるだけだったらかわせるよね?」とも思いますよね。「さっき散々優位性だなんだといっていたけど、自分から優位性をなくしているんじゃない?」とも。

ここがストーミングのミソで、確かに「自軍のバランスが崩れる」のですが、目的は「それ以上に相手のバランスを崩し、トランジションゲームに持ち込む」ことですので理には適っているわけです。リバプールにはマネ、フィルミーノ、サラーというトランジションで強さを発揮する選手が多いですので、リバプールもといクロップからしたら「我々の優位性を発揮しようとしたらこうなっただけだ」って感じでしょう。

リバプールの試合運びを観察しているとそのことがよくわかります。リバプールのゴールキックやロングパスを観ていると、「ボールを遠くに運ぶこと」「味方の選手が回収できること」を前提に蹴っていることがよくわかります。

とにかく私が言いたいのは、「ストーミングとはポジショナルプレーの概念の中の一つであり、ポジショナルプレーと相対する概念ではないのではないか」ということです。

現状の問題点

現状、マンチェスター・シティやバルセロナ型のポジショナルプレーを語るうえでの名称がないことがこの誤解を生んでいるように思います。このポジショナルプレーを「スペイン型ポジショナルプレー」と表すこともできますが、やはり何かしらの名称が欲しいところです。

もし何かマッチする名前があったらコメントで教えてください。

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