「音質にこだわらないなら、ほかをあたってください」という言葉に嘘はなかった。Sennheiser”MOMENTUM TRUE WIRELESS 2″

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「音質にこだわらないなら、ほかをあたってください」

これは、「今欲しいイヤホン?デザインもよくて、装着感もいい。ノイズキャンセリングは当然つけて、もちろん音質もよくないとね」なんて生ぬるいことをほざいていた僕に、SennheiserがMOMENTUM TRUE WIRELESS 2(以下MTW2)と共に叩きつけた強烈なメッセージです。

これまでの変遷

僕はご存じの通り、ポータブルオーディオマニアです。いや、マニアだったというべきでしょうか。今となってはiPhoneにワイヤレスイヤホンを繋ぎ、Spotifyを垂れ流すその辺のおじさんと化してしまいました。

振り返ってみると、そういった音楽の楽しみ方もまた一つである、ということに気づけたことは僕にとっては幸運でした。あれほどこだわっていた何十万もするケーブルや、持ち歩くだけで肩がこる重いDAC、起動するのに時間がかかるアンプ、CDのリッピングのストレスから解放され、ポケットからスマホとイヤホンを取り出すだけで、自分で曲を追加しなくても新しい音楽を聴くことができるという「当たり前のこと」を知ることができました。

とはいえ、ご存じの通り、音質 – すなわち素晴らしい音楽体験と利便性は反比例する関係にあります。 僕が想像を絶するほどの利便性(大多数の人々からすれば当たり前な)を手にすることができた反面、「音において自分が目指す最高のポータブルオーディオ環境」を手放すことになってしまいました。

最初に買った完全ワイヤレスイヤホン、初代MOMENTUM TRUE WIRELESSはそこそこのものでした。音質はそこまで悪いものではありませんでした。しかしながら、大型のハウジングを採用していたせいで自分の耳に多大なる物理的ダメージ(つけてると耳が痛くなってしまう)を与えました。これではいくら音が良くても使い物にはなりません。

やはりいい音だけでなく、装着感も大事だということに気づきまして。そこで僕はFOSTEXのTM2というワイヤレスイヤホンに手を出しました。そう。FitearのカスタムIEMを完全ワイヤレス化できるレシーバーにイヤホンが付属しているあれです。僕は最高の装着感を手に入れることができました。

しかし、TM2には致命的な弱点がありました。そう、びっくりするほど接続が悪いのです。駅だろうと電車の中でもどこでもかしこでも接続が切れます。左右の音ズレだって日常茶飯事です。

カスタムIEMの持つ最高の装着感を捨てざるを得なくなった僕は、続いてSONYのWF-1000XM3を購入しました。WF-1000XM3は僕に、あらゆる要素の及第点をもたらしてくれました。大きな違和感を感じない音質、耳が痛くならない装着感、人込み(例えば新宿駅)では音切れしたり、時々音ズレは発生するものの許容範囲内に収まっている、そして2万円台という価格。言ってみれば、WF-1000XM3は”すべての人の及第点”をかき集めた結晶だったわけです。ご存じの通り、WF-1000XM3は瞬く間にヒット商品になりバカ売れしました。

音質にこだわらないなら、ほかをあたってください

そんな僕に対してSennheiserは、このメッセージと共にMTW2を突き付けてきました。まるで僕が忘れていたことを思い出させるかのように、です。もう一度、あのすべてにおいて貪欲に完璧を追い求め、少しでも気に入らなかったらどんな手間暇をかけてでも理想の形にする”あの時の僕”を。まるで引退したジョン・ウィックが平穏な生活から再び悪の道に戻っていくかのように。

MTW2が”音質”にフォーカスした製品だということは言うまでもありません。でも僕は貪欲な男です。僕は音質にこだわる男ですが、だからと言って音質以外にこだわらないわけではありません。まずは”それ以外のところ”から見ていきましょう。

優れたデザインがもたらす極上の装着感

僕が初代MTWを手放した理由として、音はよかったけれども大型のハウジングが耳に合わなかったことを挙げました。これは僕だけの問題ではなく、一定層のユーザーは同じようなことを訴えていたようです。要するに、「耳に合えば最高。合わなかったら最悪」だったということです。

MTW2は、MTWと比べて2mmの小型化を実現しました。たかが2mmですが、これは人類にとっては大きな一歩です。また、耳に当たる部分のカーブが若干改善されており、無理に耳にねじ込んで固定しなくてもスッとフィットするようになっています。簡単に抜け落ちたりせず、”イヤホンがいなければいけない場所にいる”状態に自然に達することができます。

また、カラーバリエーションも白が追加され、黒と白の2色展開になりました。

大満足のバッテリー持ちと”放電問題”の解消

MTW2は、イヤホンだけで7時間、ケース込みで最大28時間の使用が可能となっています。他の完全ワイヤレスイヤホンと比べても比較的長い方で、長時間の移動でもストレスなく使用することができます。

また、MTWで発生していた”放電問題”という、満充電でイヤホンを使用せずケースに入れているのにも関わらず、待機電力でバッテリーが自然放電されてしまい、いざ使おうと思った時にバッテリー切れになってしまうという問題も解消されたということです。この問題には結構悩まされていたので非常にうれしいポイントです。

IPX4の防滴に対応

防水まではいきませんが、IPX4の防滴に対応しました。雨や汗程度であれば気にすることなく使えます。

音質と優れたノイズキャンセリングの融合

ノイズキャンセリングの種類

そもそもノイズキャンセリングには大まかに2種類に分けることができます。

1つ目がパッシブノイズキャンセリングで、中音~高音にかけてのノイズ音量に対してパッシブ(常時)に働きかけます。こちらはイヤーチップや遮音性などで、電気回路を使わずにノイズ音量を下げるノイズキャンセリングです。要するに、ノイズキャンセリング機能を使用していなくてもデフォルトでノイズ音量を下げているわけです。

2つ目がアクティブノイズキャンセリングで、低音~中音にかけてのノイズ音量に対してアクティブ(動的)に働きかけます。ノイズに対して逆相の音を電気的に生成して打ち消すという仕組みなので、音の波の間隔が短い高音域では回路処理が間に合わず、あまり効果が出ません。

これら2つのノイズキャンセリングを効果的に組み合わせることで、優れたノイズキャンセリング機能を実現することができる、というわけです。

アクティブノイズキャンセリングの種類

また、アクティブノイズキャンセリングにも方式がいろいろあります。MTW2は音質の低下を最大限抑えるために、フィードフォワード方式を採用しています。

フィードフォワード方式自体はかなりメジャーな方法で、イヤホンの外側にノイズを拾うためのマイクを搭載し、そこで拾ったノイズと逆相の音を内部で生成し、再生音に混ぜるという手法です。

もう一つフィードバック方式という方式があるのですが、こちらはイヤホンの内側にマイクを搭載し、再生された音楽と外部からの侵入ノイズの逆相の音を生成して、さらにその上に音楽の再生音を追加する、という方式です。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、いったん外部から入る音も音楽の音も全部打ち消して、その上に音楽の音を上乗せして再生する、そんな方式です。

ちなみに、ハイブリッドノイズキャンセリングという、フィードフォワード方式とフィードバック方式どちらも搭載したイヤホンやヘッドホンもあります。

フィードバック方式の方がノイズキャンセリングは強いのですが、音質が大きく変化してしまうデメリットがあります。体験したことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、耳に圧迫感を感じてしまうようなアレです。

反面、フィードフォワード方式はノイズキャンセリングはあまり強くはないですが、本来の音をある程度保ったままノイズキャンセリングを行うことができます。なので今回はフィードフォワード方式を採用したということでしょう。

実際に使ってみた

音質レビュー:そのメッセージに、偽りはなし

試聴環境はiPhone XS MaxでSpotifyを使用、最高音質で再生しています。試聴のために特に環境は整えず、あくまで普段と同じ構成で試聴しました。

前提として、ドライバーユニットは初代MTWと全く同じ7mm径のダイナミックドライバーが採用されています。なので、あくまでも初代MTWのサウンドを踏襲した上で、ノイズキャンセリングや装着感の変化によってどう変化したか、が今回注目するべきポイントだと思います。

総評

一言でいうなれば、”Sennheiserの音”がちゃんとします。

Sennheiserといえば、低音~中音にかけての豊かで穏やかなサウンドが特徴的ですが、MTW2もしっかりとそのSennheiserの音を引き継いでいます。中~高域もパリッとしたメリハリのあるサウンドです。定位もしっかりしていて、全音域にわたって破綻がなく、どんなジャンルでもそつなく鳴らしてくれます。全体的に良いバランスに仕上がっています。

音の強弱も素晴らしいです。情報量が多い楽曲でもそつなく鳴らせますし、楽器が迷子になることもありません。細かい音までしっかり表現できていて、非常に高い再生能力を持っています。

反面、派手さやアクセントといったものは少し物足りないです。ボーカルの色気であったり、ホールの空気感であったり、ロックやメタルの粗っぽさであったり、そうした「ちょっとしたプラスアルファ」があるといいんじゃないかな、と思いました。無機質感が強いサウンドかなと思います。

音楽の”音”にこだわった逸品であることには間違いありません。次は是非”楽”にも期待したいです。

それでは、印象に残った楽曲と共に軽くレビューしていきます。

福山雅治 / 群青 ~ultramarine~(Live at 広島グリーンアリーナ)

この音源は後半の福山雅治の迫力あるボーカルが特徴的な音源なのですが、やはり迫力という意味ではいまいち欠けてしまっている印象を受けました。その代わり、音の強弱や定位はばっちり決まっているので、「間違った音は出さない」という強い意志を感じることができた一曲でした。

Live音源系はもしかしたらあまり合わないかもですが、アコースティックギターとの弾き語り系は恐ろしく相性よさそうです。

You Raise Me Up / Celtic Woman

このイヤホンはこの手の女性ボーカルが歌い上げる系の楽曲との相性もいい感じです。音の粒感が細かく、繊細な表現をそのまま表すことができています。高音の破綻も全く見られません。

Livin’ On A Prayer / Bon Jovi

音の定位と分離がよく、簡単に聴き分けることができます。ボーカルの力強さに負けないくらい周りの音がしっかりついてきているのに、邪魔しあってない感じが素晴らしいです。

ずっと好きだった / 斉藤和義

そうそう。こういうの。こういうのが合うよねーって感じの一曲。あーめっちゃかっこいい。斉藤和義みたいなおじさんになりたい。

ほんとめっちゃ好きだったんだなって気持ちが嫌というほど伝わってきます。

ノイズキャンセリングは必要十分

一言でいうと、自然なノイズキャンセリングです。オンとオフで比べてみても、音質を損ねている印象は全くありません。少なくとも音楽を流している間は全くノイズが気にならないレベルまで減らしてくれますし、ノイズキャンセルとしては必要十分なレベルだと思います。

ですが、やはり”高性能なノイズキャンセリング”を求めてこの製品を買うのは賢明な選択ではないと思います。そういった方は別のノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホンを購入されることを推奨します。あくまで、いい音で聴きたい、そのためにある程度のノイズキャンセリングも必要だよね、といった考え方をしているのがMTW2です。

感動的なTransparent Hearing

俗に言う外音取り込み機能を実際使ってみましたが、驚くほど自然に外音を聞くことができます。レジを通ったり、オフィスで同僚に話しかけられたりした時もいちいちイヤホンを外す必要はありません。

すごいなと思ったのは、”外音の位置と音量がちゃんと合ってる”ことです。他社のイヤホンだと耳元で外音がすべて鳴る、しかも音ごとの音量が一律になってうるさくてとても使えたもんじゃない、なんてものもありましたが、MTW2の外音取り込み機能に関しては文句なし100点満点のレベルまで達しています。

どこでもなにしても途切れない

マジで接続が切れない。マジですげえ。

今までどんなワイヤレスイヤホンを使っても必ず音切れや音ズレを引き起こしてきた魔境・新宿駅ですら、MTW2の前には無力でした。個人的にはこれだけでお金を払った価値があったと思えるほどです。ワイヤレスイヤホンの宿命と勝手に諦めていましたが、素晴らしいの一言です。

MTW2は左右の接続のためのレーザーを改良したと謳っていますが、まさにその効果が発揮されています。

総評:音質にこだわる完全ワイヤレスイヤホン使いのオアシス

久々に気合入れて記事書きましたが、それくらい素晴らしいイヤホンです。

当然すべてがすべて完璧なわけではないですが、現状完全ワイヤレスイヤホンが到達可能な頂点に君臨していることに疑いはありません。音質、機能性、装着感、デザインと、どこをとってもベストスコアをたたき出してくれた、素晴らしいイヤホンです。

個人的には、初代MTWと同じくらいの価格帯に収めてくれた点も評価したいです。他社のハイエンド完全ワイヤレスイヤホンが大体2~3万円なので、ちょっと奮発すれば手が届くラインに置いてくれたのはよかったです。

現在人気で在庫が切れてしまっているところもあるようですが、是非試してみて下さい。あなたにも新たな気づきが生まれるかもしれませんよ。

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