新時代の寵児、INAIR M360をレビュー

紛れもなく、発明。それがINAIR M360である。

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このブログらしくない導入で始まったこの記事。それくらい今回は本気です。

ここ最近の「外面ばかり求めるオーディオ」に嫌気をさしていた筆者。自然とこのブログのオーディオ関連の記事も少なくなり、オーディオイベントからも遠ざかるようになりました。ですが、久々に「芯のある製品」を体験することができました。

オーディオマニアではなく、音楽マニアに向けた製品

オーディオは、基本的には出てくる音一本で勝負するべきだと考えています。それがポータブルオーディオなら、当然ポータブル性、装着感、デザイン性なども問われるでしょうが、それでも音質を犠牲にしていい理由になどなりません。

そもそもオーディオというのは、音楽を聴くための道具でしかありません。いわばオーディオというのは手段で、目的はあくまで「自分の満足する環境で音楽を聴く」ことにあると考えています。人によって、それが据え置きなのかポータブルなのか、歪んだ音なのか自然な音なのかなどは違えども、根本は変わらないはずです。

M360は、見た目やスペック、値段などで製品を評価し、本質に目を向けないような方には合わないと思います。買ったとしてもあまり幸せにはなれないでしょう。この製品は「音楽マニア」の方にこそ手にとっていただきたい製品です。

イヤホンではなく、スピーカー。

M360をイヤホンと表現するのは間違いです。製品の説明にもある通り、「耳に入れるスピーカー」です。訳がわからない、と感じる方もいらっしゃるでしょう。それはそのはずです。だって、今までなかったモノなのですから。全く新しいジャンルのオーディオデバイスと言っていいでしょう。
ただ、キワモノ好きなマニアの方は“アイツ”を思い浮かべるかもしれません。そう、アイツです。

PFR-V1。SONYがその変態性を最大限発揮した「パーソナルフィールドスピーカーシステム」です。筆者も1台所有していますが、こいつも言ってみれば「持ち運べるスピーカー」です。ただ、こいつはあくまで屋内での使用を想定されている「スピーカー」です。音漏れなんて当たり前(そもそも遮音する気がない)だし、ポータブル性なんて全くないです。こいつとは「ポータブルを想定しているかいないか」で決定的な差があります。

今回のレビューで1番難しいところ

ぶっちゃけ、今回のレビューはとても難しいです。なぜなら、相対的な評価をしてはいけないから。全く新しい製品なのに、他のものと比べることなんてできません。要するに、M360だけの絶対的な評価をする必要があるのです。いわば、今までの「イヤホン」や「スピーカー」の辞書に付け加えるのではなく、「イヤースピーカー」という新たな辞書を作る必要があるのです。

開封

パッケージ。淡いイエローがキレイ。

パカっと開くとこんな感じ。

人類はまた、新次元の音楽体験へ

透明のカバーを外すと黒いボンボンが2つ。

これ、「なんで普通のイヤホンのパッケージみたいに横に入れてボディを見せる感じにしなかったのですか?」と開発者の佐川さんに伺ったところ、「だって、スピーカーの正面はこっちじゃないですか。スピーカー真横に向けて聴かないでしょ」とのお答えが。ちょっと痺れた。

内容品各種。替えのイヤーピース、クリップ、ネックバンド等

色はブラックとシルバー。どっちもいい色しています。

イヤーピースの寿命についてお聞きしたところ、やはり数か月使っていると油を吸ってしまうので、一定期間が過ぎたら中性洗剤を数滴たらしたぬるま湯(38-40℃程度)で軽く洗ってやるといいそうです。それでも改善されなくなってしまったら交換してほしいとのことでした。

なお、交換用イヤーピースの単品販売も計画しているとのことです。スポンジ型のイヤーピースはどうしてもシリコン製のものより寿命が短いので、うれしいですね。

ハウジングはめちゃ小さい。佐川さん曰く、「中にはケーブルしか入っていないけれど、装着のために必要」とのこと。

注意

さて、重要な注意。このデバイスは正しい装着方法で装着しないと失礼ながらマジでクソみたいな音しか出ません。皆様正しい装着方法で身につけてください。公式で装着方法の動画が上がっていますので参考にしてみてください。耳穴にねじ込むのではなく、かぶせる/のせるというのが正しい表現かなと思います。

さて、聴いてみようじゃないか

ゴタゴタ書いて疲れたので、試聴レビュー行ってしまいましょう。DAPはCayin N6、イヤホンが3.5mm4極のマイク付きプラグなので、3極変換コネクタを使っています。ご了承ください。

福山雅治/追憶の雨の中(冬の大感謝祭其の十四 野郎夜Ver)

圧巻の音場と定位。よく録音できているライヴ音源との相性は抜群です。定位がここまで完璧なポータブルオーディオデバイスは数えるほどしかないのではないのでしょうか。野郎たちの野太い声援も完璧に再現されています。素晴らしい。

福山雅治/蜜柑色の夏休み 2015

福山のいいところが凝縮されている私のベスト試聴音源のひとつ。これがまともに再生できない環境は蹴っ飛ばしていいのですが、問題なくクリアしました。楽器との相性が素晴らしく、聴こえない音がありません。完璧な定位と分離です。音が埋もれるとか、絶対ありません。

FAKiE/Summertime

ユニクロのCMに使われてた曲なんですが、とにかくかっこいい音源です。カヴァーの中では最高傑作ではないでしょうか。カットギターが半端なくうまい。ヴォーカルもちゃんと「歌い方をわかっている」タイプなのでストレスなく耳に幸福を届けてくれます。

結構ちゃんと再生するのは難しい音源なのですが、難なくついてきます。レスポンス等は完璧。低域の量感、沈み込みはリファレンスと比べると若干少な目。最近の歪んでいる低域とは違ってちゃんとした低域を出してくれるのは高評価。

Keith Jarrett/The Köln Concert

ちゃんとピアノの音がする。間違いなく真実のピアノ。正しい位置から正しい音が聞こえてくる感動。語彙力の喪失。

Avicii/Waiting For Love

試聴なので、向いてなさそうな音源も。EDMだったら流石に歪んだ低域がないとだめかなーと思っていたのですが、これはこれでありかなと思ってしまいました。特にWaiting For Loveなんてちょっと静かめな曲はうるささが上手ーく取れていい雰囲気でした。これ聴きながら踊り狂いたい方にはおすすめしません。

mao/Regrowth

ドラえもん、そのポケットでーってあの歌を歌っている方です。この音源、なんと彼女の口笛の音源です。実は再生が難しい音源。息継ぎ部分の再現性があまりよくないですが、及第点でしょう。全域にわたってリアルに再現してくれるので、こういう音源でも楽しめるのは魅力です。

音、装着感など

装着感はかなり良いです。装着して10分くらいすると、マジでつけているのを忘れます。

一つ注意点は、遮音性が全くないこと。「スピーカーなんだから当然だろ」って話なんですが、周りの音聴こえまくりです。ただし、開発者の佐川さんによると「周りの音は聴こえるが、こちらが聴いている音楽の音は周りには漏れない」設計になっているそうです。試しに、静かな場所で普段私が音楽を聴いている音量よりちょっと多めの音量で音楽を聴いているところで友人に「音漏れてる?」と聞いたところ「全然聞こえないよ」とのことでした。逆に友人に付けさせてみたところ、本当に何も聞こえなくてびっくりしました。友人がしかめっ面をするぐらい音量を上げてやっとちょっと聞こえるくらい。なので、誰かと話しながらとか周りの音を聴きながら作業をしなければいけないような方でも問題なく使用できるのはいいなと思いました。料理中とかOCしているときとかね。

音に関して。とにかく何度でも言いますが定位が完璧。初めてスピーカーで音楽を聴いた時のあの感動がまた襲ってきました。とにかく丁寧に綺麗にすべての音を余すことなく再生してくれます。

低域は少し足りない場面が出てくるかもしれません。非常に繊細でクリアな音が聴ける分、若干足りなく感じる方も多いと思います。正直、ポータブルオーディオの時点で低域は犠牲にせざるを得ないので致し方ないですが、最近の市場傾向を見るとおそらく物足りなさを感じる方も多いでしょう。

注意点。M360を使うと、録音の良い音源が欲しくなります。お金が無くなります。

新しい価値を生み出してくれるデバイス

最初に書いた通り、これは新しい発明品です。受け入れられるまで時間がかかることは十分承知です。だからこそ、一度でいいから聴いてみていただきたい。新たな価値を生み出して「感動」を作り出してくれる製品です。

ちなみに、現在M360を取り扱っているお店は、

・e☆イヤホン(秋葉原店、渋谷TSUTAYA店、名古屋大須店、大阪梅田EST店、大阪日本橋本店)
 
・タワーレコード(渋谷店、新宿店)
 
・池袋ロフト、名古屋ロフト、天神ロフト
 
・Amazon
 
 
以上のお店になります。
 
最後に。お忙しい中色々なお話をしてくださった&COLORの佐川さん、ありがとうございました!

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