エル・クラシコ~理想を捨てたバルサと理想がないレアル~

今回は先日行われたエル・クラシコから、クラシコがただのダービーマッチに成り下がってしまったねというお話。

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「初の食前クラシコ」となった今回のクラシコ。今季はバルサとレアルの間には試合開始前で勝ち点11差がすでについており、バルサは勝てば首位独走態勢といった感じ。レアルは意地でも勝たなければ今季のリーガは厳しいだろうという状態です。

レアルが今季あまりリーガでパッとしていないのは「選手の能力に頼り切った戦術」の弱点が浮かんでしまっているからに他ならないでしょう。イングランドにいるハゲやイタリアにいるハゲと違って考える脳みそがないスペインのハゲには残念ながら戦術という難しいタスクは無理でしょう。

過去2シーズンはだましだまし選手の力に頼って勝つことができていました(レアルの普段着みたいなものですからね)が、今季はロナウドの攻撃面での不調、守備陣のパフォーマンスの悪さが目立ちました。選手に頼り切ってるレアルは選手の調子がチームにもろに影響を与えてしまいます。

対するバルサは、まさに「理想を捨てた」サッカーを展開することでここまで好成績を維持してきました。まさかバルサが4-4-2の撤退ブロックを敷くなんて・・・、クライフやらペップは内心泣いていることでしょう。パウリーニョが活き活きしている中盤なんて・・・ねえ。

さて、導入はこの程度にしてさっそくマッチレビューに入りましょう。

スタメン

レアルはイスコではなくコバチッチをスタメンに。「自分たちのサッカーをする」ことよりも「相手にサッカーをやらせない」というジダンの意思の表れでしょう。

バルサは特にサプライズはなし。ウムティティがケガで使えないのが痛手かなあというところです。

ボールが回らないバルサ

前半のレアルの守備は、まさにマンツーマンという形でした。

中央の選手にはマンツーマンでつかれているため、外→外のルートかロングフィードからの展開しかできない状況が続きます。ただ、この状況で外に展開しても・・・

「ここしかない」とわかっているのでSBが自信をもって寄せに行けます。もう一つ場面を。

ここまで来られたらボールを回すことができません。レアルがボールを握りバルサが受けるという異色のクラシコが前半は行われていました。

もう一つビルドアップの場面を。

ボールをもらえないメッシが中盤に降りてきて縦パスを入れるところですね。ここにヴァランが寄せに来ます。

さすがにこれでは前を向けないのでブスケッツに戻します。

はいここ。

普段のブスケッツならここで少し溜めを作ったり、近くの選手とワンツーしたりしてリズムを作ったりするんですが、前半の入りが悪かったからか単調なパスが多く、なおかつルックアップも気持ちいつもより少なめに感じました。そのため、前半はブスケッツとそこに関連するプレーの精度がすこぶる悪かったです。

この場面も、単調なパス回しからモドリッチに奪われてカウンターチャンスにされてしまいました。

レアルのビルドアップ

さて、前半開始から面白いようにボールを確保できていたレアルのビルドアップはどのような形で行われていたのか。場面はマルセロがボールを持った場面。

やはり時代はSBが攻撃の起点になる時代ですな・・・。ロナウドは前半通してこの右SB裏のスペースをずっと狙っていました。

ここでバルサが囲い込み。さすがにマルセロに戻さざるを得ないです。マルセロを経由して右のモドリッチへ。ゾーンで守る以上、ボールサイドに寄せて守らざるを得ないので逆サイドは穴になります。

カルバハルもこれに合わせてサイドを駆け上がります。

このおかげでサイドで2対2になりました。数的同数のためここはバックパスを選択。

ここでモドリッチが引いてくることで裏にスペースができます。

これにイニエスタがついていきます。

スペースにコバチッチが侵入を試みます。ボールはサイドで幅を取っているカルバハルへ。

カルバハルを経由してコバチッチへ。しかしこれにはブスケッツがついていきます。

ブスケッツがそのままサイドで対応します。カルバハルはそのまま中へ入っていく動き。モドリッチに戻します。

ここで引いてくる動き。

バルサDFもこの動きについてきます。

うーん・・・個人的にはこのスペースに突っ込んでくるやつがいたら面白いなあとか思うのですが。右サイドで詰まってしまったためDFまで下げてからサイドチェンジ。

ヴァランが4-4ブロックの前でボールを持ちます。ここが4-4のゾーンで守る弱点ですからね。

ボールは左サイドのマルセロへ。ここでマルセロが時間を作ってクロースがインナーラップする時間を作ります。

バルサの右SBがつり出されているスペースをクロースが使いに行きます。マルセロからクロースへ。

完全に使われてしまいました。ロナウド番をしていたピケですが、さすがにここはボールに行かざるを得ません。

空いたロナウドへクロス。

おそらくこのカバーリングポジションにカルバハルがいるので、おそらく狙っていた形なのではと。ロナウドの芸術的なカスリで助かったバルサでした。

前半のレアルは、ボールをもって攻め込む→ロストor攻撃が失敗してバルサボールになったらマンツーマンでハメにいってボール回収の繰り返しを行っており、まさに「一昔前のバルサ」に近いサッカーを展開していました。

特に前半のコバチッチはセカンドボールの回収から運び、フリーランと素晴らしい動きを見せており、まさに「専門職軍団」のレアルの中で異色の存在でした。

この場面。ボールを持っているロナウドのサポートに行くコバチッチ。

直接的にボールに絡んではいませんが、このおかげでトライアングルができました。ボールは大外のカルバハルへ。

カルバハルが内へはいりモドリッチが外へ流れる動き。モドリッチへボールが渡ります。

ここでDFラインにわずかにスペースが空きました。ここにコバチッチがGOをかけます。

誰もコバチッチについていけてません。

フリーでクロスまでもっていけました。

このように、コバチッチは守備時はメッシへのコースを消し、攻撃ではフリーランや抜け出し、ビルドアップ等で大きく貢献していました。

前半バルサで輝いていたのはかろうじてパウリーニョでしょうか。前線で+1の数的優位を作ってくれるパウリーニョがこういう試合だと輝きますね(うれしくはないですが)。

このようにレアル優位で前半は進みますが、なかなかチャンスを活かすことができません。そうこうしているうちに前半が終了してしまいます。レアルはおそらく前半飛ばして1,2点のリードを持って後半へ、というプランだったと思いますが、最後でテアシュテーゲンの神ストップやベルマーレンとピケの決死のディフェンスのおかげでバルサが0-0のまま折り返すことができました。こうなると有利なのはバルサですね。レアルは前半明らかに飛ばしまくってますから後半ガス欠するのはわかりきってますし、そもそも勝利が義務づけられているレアルとは違ってバルサは「引き分けでもいい」という精神的優位があります。

ボールが回るようになったバルサ

後半に入ってレアルの選手はもう前半のようなマンツーマン気味の守備はできなくなってしまいました。こうなったらもう試合はバルサペースです。

メッシがまた降りてきているのはおいておくとして、前半ならこの位置でボールをおいておくことはできませんでした。

しかも、バルサの4-4ブロックは明確なゾーンディフェンスなのに対し、レアルの中盤4枚の守り方はかなりいびつです。コバチッチがメッシにつくので実質4-3(1)のブロックですね。ただまあレアルの3センターの雑さなんてわかりきっていることでして。こういう守り方したら結局カゼミロヴァランSラモスの個人で守ってもらうしかないわけです。

そして、この場面見ていただくとわかりますが、バルサの両SBが高い位置で幅をとれていることがわかります。これによってボールがさらに回るようになる・・・と。

てなわけで、レアルが甘くなってバルサが締まりだした頃にやっぱり先制点がバルサの元へ。

バルサの先制点

局面はレアルが攻め込んできたところから。

前半とは打って変わって、逆にバルサの選手がマンツー気味に抑えています。

DFを経由して逆サイドへ。

さて、ここです。この場面でのSロベルトの対応です。

この場面、大外には見えないですがマルセロがいます。ただ、裏を取る動きをベンゼマも見せていますね。守備の鉄則として、「外より内」があるので、この場面は外捨てて内を抑えに行く場面です。

はい。ちゃんとわかっていましたね。ピケがついていけてないので、このパスが通っていたら完全に終わってました(まあベンゼマさんなのでポストとか当ててた可能性もありますが)。

Sロベルトがそのまま駆け上がってカウンター発動。この時、ブスケッツはちゃーんとルックアップで味方の位置を確認しています。こういう細かいプレーが効いてくるわけです。

ボールはイニエスタへ。

イニエスタを経由してブスケッツへ。「ブスケッツに前を向かれるとやばい」とわかっているのでクロースが距離を詰めに行きます。

さて、ここで並のボランチなら簡単に蹴ってしまうところなんですが、これがブスケッツが「世界最高峰のボランチ」と言われる所以だというプレーを見ることができます。

クロースが寄せに来ました。

矢印の方向に行く素振りを見せます。

逆側へターン。この時、クロースだけでなくモドリッチも引き付けているのに注目。

クロースから距離を取ることに成功します。

右へ展開すると見せかけ・・・

キックフェイント。

このブスケッツ1人の一連のプレーで、少なくともこの中盤3枚の選手が釘づけになりました。そして一番空けてはいけないエリアにスペースが空きました。

ブスケッツからラキティッチへ縦パスが入ります。

ここも、スアレスが左、パウリーニョが右で横幅を取っているので中央の隙間がある上に、Sロベルトがそのまま上がってきているので5対4の数的優位になっています。

本当に現代サッカーかよってレベルでバイタルぶち抜かれていきます。この時のレアルの守備なんですがね・・・

さすがにこれは中盤3枚はがされてバイタルぶち抜かれているわけですから、マルセロにメッシ預けてコバチッチはラキティッチに当たりに行くべきだと思うんですよ。DFラインにもう一人いたら話は別なんですが。結果的にメッシが2人を引き付ける形に。

じゃあどうなるかって、そりゃヴァランがあたりに行くしかないよなって話です。

Sロベルトへいいパスが通ります。そしてヴァランが離したスアレスがドフリー。

ここしかないってところに最高のパスが出てスアレスがゴール、バルサ先制です。

まあ、ぶっちゃけブスケッツが中盤3枚一人で無効化した時点でほぼ詰みだったんですが、さすがにコバチッチそこは捨てていいよと思った次第です。

畳みかけるバルサ

さて、ボールが回せるようになって先制点とれちゃたバルサ。そりゃもう勝負所はここしかないってことで。

場面はまた自陣でボール奪ってカウンターの場面です。

バイタルを爆進しているのは何を隠そうCBのピケさんです。なおここまでノープレッシャーの模様。

中盤に待ち構えていたメッシに預けて、自分はさらに駆け上がります。

パウリーニョはおそらく預けどころのポジショニング、んでもって駆け上がるピケに若干つり出されているヴァラン。

先制点の場面もそうですが、レアルは攻めるときにSBが高い位置を取って幅を取ることでメリットになっている反面、こうした場面でどうしても守備の枚数が足りなくなるデメリットがあります。

スアレスはまたもやフリーで抜け出しに成功。さすがにこの人を2回もフリーにしちゃダメでしょと。

そしてコバチッチもこの距離感。こんだけスペース空いてたらメッシ先生は仕事できちゃいますよ。もうちょっと厳しくあたりに行かないと(理想は挟み撃ちなんですが、いかんせんプレスバックがない)。

そりゃー通るよねー。

んでもって1対1。

ここからのゴール前の混戦でパウリーニョのヘッドをセーブしたGKカルバハルが一発退場&PKを献上。そのPKをメッシが鬼の弾丸シュートで見事に決めて2-0。この時点でゲームは終わってしまいました。

やっぱりサッカーってポジショニングのスポーツだよねって

試合は最後アレイクスビダルがダメ押しの3点目を決めて3-0でバルサの完勝に終わりました。

さて、2点目を奪ったバルサは試合を閉じるだけとなったわけですが、やっぱりバルサの閉じ方といえば圧倒的なロンドでしょうと。

例えばこの場面。レアルがもうベイルとアセンシオ投入して何とか追いつこうとしている場面。

とりあえずぱっと見でもこれだけのトライアングルが描けているわけです。この五角形(CB、SB、ボランチ)はボールがよく回る時ってだいたいこうなってます。そりゃボール奪えないっすよと。現代は「GKもビルドアップに絡む時代」なわけで、ここも使えるバルサは一つ数的優位になれるわけです。

ここでも五角形。

レアルもここまで撤退させられるとさすがに奪ったところで得点はかなり難しいのではないかと。

結局、バルサがこの圧倒的なボールポゼッションで得点後の大事な時間を使うことができ、なおかつボールを切らさないことで交代を5分以上遅らせることができました。

こういうの見ていると、サッカーってやっぱりどこまでいってもポジショニングのスポーツだよなと思うわけです。ネットワークがどのようにつながっているかっていうのが大事なんですね。

まとめ

今のバルサのサッカーは正直言って好きではないです。やはりバルサの中盤はカンテラーノで固めて圧倒的なボールポゼッションとポジショニングで圧殺するくらいじゃないとダメだと思いますし、パウリーニョが活きている中盤なんて見たくないです。ただ、シーズン開始前にいきなりネイマール引っこ抜かれてめちゃくちゃ叩かれて始まったシーズンですので、「理想より現実」というのが彼らの偽らざる本音でしょう。それだけバルサが「特異なクラブ」であることの証明にもなりますね。

レアルは・・・うん。あれがレアルの悪いとこなわけですが、年間トータルで見ればあれで勝てちゃうんだからずるいですよね。はあ・・・。

てか思うんだけど、パウリーニョみたいな飛び出しやスペース見つけて上がっていくセンス持ったカンテラーノでセスクさんっていらっしゃらなかったっけ・・・?今どちらにいらっしゃるの・・・?

そんなことを思ったクラシコでしたが、もう今のクラシコに「ただのダービーマッチ」以上の何かを探すことは難しいです。いつの日か、またあの頃の高度な戦術戦を繰り広げるようなそんなクラシコを観れることを願ってやみません。

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